新市考察(包括的な生活機能という視点 其の1)
一口にコミュニティと言ってもその範囲や機能といったものは、人それぞれの解釈で違うだろうが、1つ「コミュニティとは生活するに足る場」と定義すれば、それは人の生活そのものを包括的に充足できる空間であるとも言える。つまり、この世に「生」を受けてから成長を重ね、老いて死するまでの生活に必要な機能が包括的に備わっていることを意味する。
しかし、地域生活共同体といった概念が崩れると、コミュニティでの包括的な生活機能の充足ができなくなるようである。包括的な生活機能の充足できなくなれば、不足する生活機能を求めて他のコミュニティに移動せざるを得ず、住民はそこの場所から流出することになるだろう。
日本の中心ともいえる東京都千代田区もこんな課題を抱えている。(千代田区HPより)
●区の抱える主な課題
定住人口の回復
昭和35年の12万人(住民基本台帳人口)をピークに区の人口は減り続け、平成11年1月には3万9千567人となっています。人口の減少により、地域のコミュニティが衰退し、生活関連の商店が減少するなど、区民生活に大きな影響を与えています。
人口減少に歯止めをかけ、住み続けたいと考えている区民が安心して「住み続けられるまち」にするため、定住人口の回復を図ることが最重要課題となっています。街づくりと連携した住宅確保など定住人口対策に取り組んでいます。
地域経済対策
長期化する景気低迷、金融不安等、昨今の経済情勢は極めて厳しい状況にあり、本区の中小企業も売上げの減少や資金不足などの深刻な経営難に直面しています。このため、区内中小企業の経営安定化及び活性化に向けて、地域経済対策に取り組んでいます。
千代田区では、コンビニはあっても、日用品を購入できる身近な商店街は少なく、子供たちの足でも歩いていける距離には見出しがたいとも言われている。子供を生み育て、老いていく人間の基本的な営みが補完できなければ、地域社会は空洞化していくようである。
大型ショッピングセンターで大量に買い物をする生活スタイルは、車と冷蔵庫によって成り立っているといわれる。地域の商店は大型ショッピングセンターと価格競争をしようとしてもなかなか歯が立つものではない。営業時間にしてもコンビニにはかなわない。しかし、まったくそれら商店がなくなっていいのか考えると難しい問題である。互いに補完しあう地域生活共同体という仕組みづくりがポイントであろう。
いずれにしても地域社会に求められているものは、包括的な生活機能の充足できることであり、そのためには地域生活共同体の再生が必要であると考える。