新市考察(経営という視点)

ピンチをチャンスに

国や地方、自治体の再生に向けて「改革」は待ったなしだという感覚は、誰もが漠然としながらも受け止めていることは、色々な方とお話をする中で感じるところです。平成の大合併も地域や自治体の改革の機会と捉え、「しょうがない」という発想からピンチをチャンスに変える戦略的発想が必要だと考えています。

そこで、「地域経営」という観点からこれからの地域の在り方を考察してみたいと思います。 「地域経営」 を考える場合、2つの側面を考える必要があります。1つは「自治体の経営」であり、もう1つは「地域の経営」です。一般的に「経営」とは、「人・物(資源)・金」を顧客の認める新しい価値につくりかえる機能だといわれています。この機能が十分に発揮される所に活力が生れます。

社会の活力

社会の活力の多くは、民間の絶え間ない創意工夫から生れてきます。少し乱暴な言い方をすれば、民間の活動とは、「自分で稼いだ金を自分の望むように使う」という行動原理があり、積極的な行動を促す性質がありますが、公共の活動とは、「他人の金を他人の為に使う」という補完的な役割を果たすという原理があり、どちらかといえば消極的な行動になりがちだと言えます。

現時点ではっきりしていることは、三位一体の改革が具体的に進行する中で、これまでのようにカネがなければ国がなんとかしてくれるといった、他力本願・他者依存で物事が解決するような時代は終わったということです。それぞれの家庭生活がそうであるように、自分で稼いだカネを自分の意志と責任において使っていくという、ごく当たり前の原則を行政にも貫徹していかなくてはなりません。

どんな価値を創造するか

「経営」というものを「新しい価値につくりかえる機能」と定義するならば、その「価値」を明らかにしていかなくてはなりません。つまり、どんな価値を創造していくのかということです。

1つ目の価値は、「生活するに足る地域」であること。住民一人ひとりの暮らしや生きがいといった視点に立って、これまでの効率重視の画一的な施策展開を見直す必要があります。行政の効率化を否定するものではありませんが、効率化を図った方がよいものと多様化を図った方がよいものを仕分けることが必要です。例えば、広域・市域・小学校区・自治会・家庭といった5つの視点やモノサシで政策づくりを考えることです。地域や自らの創意と主体性が十分に発揮できる仕組みづくりが大切だと考えます。

2つ目は、住民の公共利益の拡大です。公共サービスの担い手を見直すことにより、ローコストで住民負担を相対的に下げるということと、当たり前の話ですが、同額のコストであれば現行のサービス水準より、より質の高いサービス水準を目指すということが重要です。その為には、受益と負担の関係を明らかにしていくことが必要だと考えます。

3つ目は、自治体の権能の強化です。中央集権から分権社会の到来と言われ久しくなりますが、実態としては仕事は増えるが財源・権限は今一という状況ではありますが、自治体の権能の強化を測ることにり、着域に暮らす人々の創意工夫による挑戦の機会と成功のチャンスを確保していくことが大切です。チャレンジャーが溢れることは地域の経済活動を刺激することにもなり、活力が新たな活力を呼び込む地域となると考えます。

これからは

「行財政改革」の取り組みでよく話題に上がるのが、イギリスのサッチャー氏の話です。サッチャー首相がイギリスの改革をするときに「何で改革か」という質問に対し「バリュー・フォーマネー・フォー・ザ・タックスペイヤー」つまり「税金の払い甲斐を感じる仕事をするのが役所の役目」と言った意味の答えをしたと言われています。

これからは、行政管理という発想から行政も経営という発想が必要になると思います。