地方財政の行方 其のニ

はじめに
この時期、どこの市町村においても、平成16年度の予算案の発表を迎えています。
自主財源が乏しい市町村ほど、予算編成においては地方交付税に頼らざるを得ない訳ですが、その地方交付税が市町村には予想以上の額の減額となり、大変厳しい状況となっています。
前にすこし書きましたが、地方交付税の不足分を補充する手だてとして、地方財政対策上「臨時財政対策債」の制度が延長されましたが現実には赤字地方債であることには変わりはなく、抜本的な解決策とはなっていないのが実情です。
まちの人は
いろんな人と話をする中で「合併」の話や「事業」の話は出てきますが、町の財政状況については余りピンとこないのが現状のようです。説明に少し困るのは「町の財政は健全か?」と問われた時に、「不健全な健全さ」と言わざるを得なく、「地方財政計画」や「臨時財政対策債」の状況や仕組みについてもある程度説明もしなければならないことで、これがまた「何兆何千億の世界で」説明しているうちに「そんなめんどくさい事はいーわい」となってしまうこともあります。
どんな状況か?
総務省は、全国都道府県総務部長会議で、平成16年度の地方交付税と、交付税の不足分を補充する臨時財政対策債を合わせた実質的な交付税収入が、前年度より約2兆8000億円(12%)減になることを示し、都道府県に歳出の徹底削減を求めました。
実質的交付税収入が前年度を下回るのは94年度(1.6%減)以来で、交付税不交付団体の東京都を除き、1道府県あたりの平均減少額は300億円余りに上り、自治体はかつてない厳しい予算編成を強いられるようになりました。
平成16年度の交付税総額は16兆8861億円で、前年度より1兆1832億円減。臨時財政対策債総額は4兆1905億円で、減少額は1兆6791億円に上ることになります。
自治体にとって交付税は地方税と並ぶ歳入の柱となっており、税収が少ない所ほど、影響を強く受けることになります。
赤字予算・・・
これら一連の措置により、ついに沖縄県平良市が「赤字予算案」を発表しました。
2月4日の報道では「沖縄県宮古島の平良市(人口約3万5千)は、04年度の一般会計について約6億7千万円の赤字にする異例の予算案を発表した。」「同市は、政府の「三位一体改革」で税源移譲を先送りにされたまま財源を大幅に減らされたことへの抗議と位置付けている。」「予算案は、04年度の歳入を約152億円と計上。財政調整基金などすべて取り崩すが、地方交付税が6%減ったことが響き、前年度比13億円の歳入減と見込む。歳出は158億7千万円。臨時職員の人件費や公共事業分を25%削り、前年度より約6億6千万円減らしたが、限界という。」内容です。
2月11日の報道では、国・県の指導のもとに、赤字予算案を撤回し、収支の帳尻を合わせた新しい予算案を組んだということですが、自治体の本格的な厳しい現実が伺えます。
これからどうなる・・
麻生総務相は13日の閣議後の記者会見で、地方自治体の二〇〇四年度予算編成で多大な財源不足が生じている問題を受け、同年度から新設される「地域再生事業債」の発行枠(八千億円)を拡大することを明らかにしました。
これについては、元利償還には地方交付税を充て、財政健全化債の発行司熊額や対象事業の拡大も実施する方針だといいます。
地域再生事業債
市町村では事業費の75%まで、この地域再生事業債(借金)をもって充てることができるようです。
また、借りた元金と利子は、あとで地方交付税で補てん(面倒を見る)するとのことですが、後年、地方交付税の額がその分だけ増えればいいのですが、増えない場合はその分だけ地方交付税の配分が減ることになり、その年のやりくりが大変になることと思われます。
これについては、現在起債している臨時財政対策債についても同じことがいえます。
市町村の現場では、合併論議も最終局面を迎え、それまでの間その時の都合あわせの場当たり主義に陥らないように気を付けていかなくてはなりません。