地方財政の行方 其の一
地方財政制度について
地方財政は、約3,300の地方公共団体の財政の総体で、人口や産業の集積の度合いによる地域間格差や景気の動向による税収の年度間格差にかかわらず、地方公共団体がその重要な責任を果たすことができるよう、地方財政計画(多種多様な地方公共団体の財政の複合体である地方財政の規模や収支見通しを全体として捉えたもの)を通じて、地方交付税や地方債などにより各地方公共団体に財源保障をしています。
財源の足りない地域では、行政サービスにあてるお金がないからといって、うちの地域では、小学校を4年間にするとか役場は午後3時で閉めてしまうというわけにはいきません。となると最低限の行政水準を保つためには、その財源の保障がなくてはなりません。これが地方財政制度です。
地方債による財源措置として
地方公共団体の歳出は地方債(地方公共団体の借入金)以外の歳入をもって賄うことが原則ですが、建設事業など将来の住民にも経費を分担してもらうことが望ましい場合、あるいは災害など臨時的に多額な出費の必要がある場合には、地方債を経費の財源とすることができます。自治財政局では毎年度地方債計画を策定し、地方債発行額の見込みを定めるほか、起債の許可等の事務を通じて、限られた地方債資金の配分を行っています。
地方交付税による財源調整として
本来、地方公共団体の財源は自ら徴収する地方税など自主財源をもって賄うことが理想です。しかし、現実には税源などは地域的に偏在しているため、これを調整し、地方税収入の少ない団体にも、一般財源(使途が特定されず、どのような経費にも使用することができる財源)を保障するための仕組みが必要となります。このような趣旨から設けられたのが地方交付税制度です
よく財政状況が厳しいと言われるが
地方財政計画とは簡単に言えば、国が法律や政策として定めた、地方公共団体が行なうとされる事務を、全ての地方団体について算定しそれを合計したものです。地方公共団体がやらなければならない事務に係る経費の積み上げです。
地方財政は、約3,300の地方公共団体の財政の総体で、その多くは財政力の弱い市町村で占められています。地方財政の財源不足は地方税収等の落込みや減税等により平成6年度以降急激に拡大しており、平成15年度は平成14年度に引き続き17兆円を超える大幅な財源不足が生じています。
どのような状況かといえば
地方財政の借入金残高は、平成15年度末で199兆円と見込まれている。近年地方税収等の落込みや減税による減収の補てん、景気対策等のための地方債の増発等により急増し、平成3年度から2.8倍、129兆円の増となっています。
この借入金の増のうち、減税補てん債、財源対策債、減収補てん債、臨時財政対策債、交付税特別会計借入金という特例的な借入金は70兆円と5割強(54%)を占めています。
そして、特例的な借入金のうち赤字地方債である減税補てん債、臨時財政対策債と実質的な全国ベースでの赤字地方債である交付税特別会計借入金の合計は50兆円となっています。
地方財政計画は、S50年度には21.6兆円でありましたが、S60年度には50.5兆円、H3年度には70.9兆円、H13年度には89.3兆円と急激に拡大してきました。
しかし、地方財政は、H6以降多額の財源不足が続いており、H13年度から従来の地方財政対策を見直し、国と地方の責任分担の更なる明確化、透明化を図るため財源不足のうち財源対策債等を除いた残余については国と地方が折半し、国負担分については一般会計からの繰入により、地方負担分については特例地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる制度改正を実施しました。
これにより、市町村合併の議論に拍車がかかったのも事実だと思います。