H16・地方財政の行方H16

はじめに
平成16年11月26日、財務相の諮問機関「財政制度等審議会」が平成16年度予算編成について建議しました。この中で国財政の悪化を踏まえ、国と地方のあり方については、諸制度について「保護・救済型」から「自立支援型」の制度への転換と持続可能な財政構築を求めています。
地方財政について
地方財政については、「ア.地方の自立のための改革に向けて」として
(1)では、『 「地方にできることは地方で」の原則の下、地方行財政運営の実現のためには、補助金改革等を通じて国の関与の縮減と地方の権限・責任の拡大を図るとともに、国への財政的依存の状況を招いている地方交付税について「自立支援型」の改革を行っていく必要がある』とし
(2) では、『国と地方の問題を考えるにあたっては、国と地方それぞれの財政事情を十分に踏まえる必要がある』として、『現状では、国の財政事情は地方に比べ厳しいものとなっており、「平成15年度のプライマリーバランスは、国が約19.6兆円の赤字に対して、地方は約9,000億円の黒字となっている」』と述べり、国の財政の厳しさとその国に依存する地方の余裕を主張しています。
(3)では、『昭和29年度に構築された地方交付税制度は、50周年を迎え国土の均衡ある発展に寄与してきた。しかし、今日では地方公共団体のコスト感覚を弱め、地方歳出増加の原因となり、国が地方に事務事業の実施を求める一方で、その財源を保障する発想は改めるべき時期にきていると考えられる』
『地方の財政運営にモラルハザードをもたらしている財源保障機能を将来的に廃止し、税収の偏在に伴う財政力格差を是正する機能(財政調整機能)に限る仕組みとするべきである』としています。
(4)では、『税源委譲を含む税源配分の見直しは、三位一体の改革の中で検討し、見直しの場合、地域間の税収の偏在がさらに拡大することになり、今後、財政調整を含め検討が必要』としています。
しょうぞう力的解説
この中で「国が地方に事務事業の実施を求める一方で、その財源を保障する発想は改めるべき時期にきていると考えられる」「地域間の税収の偏在がさらに拡大することになり、今後、財政調整を含め検討が必要」としていますが、この「事務事業のあり方」と「税収の偏在をどのような方法で調整するのか」が市町村にとっては大変重大なことで、簡単にいうと「やらなければならないこと」は沢山あるが「やるためのお金がない」ということになり、市町村にとっては財政的に死活問題でもありあります。今後の動向に注意が必要です。また、第二交付税案が全国町村会から出されているのが注目されます。
平成16年度予算について
(1)地方財政計画の見直しによる地方交付税総額の抑制方法を
『標準的水準の精査』として、地方財政計画は「標準的な歳出」を計上するとされている。計画額が過大に計上されれば、地方交付税総額が過大となることに留意しつつ、歳出各項目の水準を精査し、歳出全体の規模を抑制する必要がある。
まず、投資的経費の単独事業のように、近年、計画額が実態の額を大幅に上回っているものがある。このような項目は計画額を実態に合わせて削減する必要がある。
また、給与関係経費は、地方公務員給与の実態について国家公務員の給与水準を踏まえた調整を行った上で、地方財政計画に計上することが原則である。しかし、地方の技能労務職員(運転手、清掃職員等)の給与等については、このような調整が不十分なまま、高い水準が是正されずに地方財政計画に計上されている。このような部分については、所要の調整を行った上で計上するべきである。とし、
『財源保障の範囲の見直しと地方公共団体の自助努力』として、補助事業に係る地方負担分(いわゆる補助裏)は、事業の性格に関わらず、地方財政計画に計上され、全額が財源保障の対象となっている。しかし、地方公共団体の補助金依存体質を改善する観点も踏まえ、事業の性格を踏まえながら、補助事業に係る地方負担の財源保障の範囲の絞り込みを検討すべきである。
また、過去に発行した地方債の元利償還費である公債費についても、その全額を財源保障の対象とすることが適当か議論する必要がある。としています。
しょうぞう力的解説
特に注目したいのは「過去に発行した地方債の元利償還費である公債費についても、その全額を財源保障の対象とすることが適当か議論する必要がある」としているところです。
地方財政は、H6以降多額の財源不足が続いており、H13年度から従来の地方財政対策を見直し、国と地方の責任分担の更なる明確化、透明化を図るため財源不足のうち財源対策債等を除いた残余については国と地方が折半し、国負担分については一般会計からの繰入により、地方負担分については特例地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる制度改正を実施したところです。
これにより、H13年度より地方は予算の財源不足分を「臨時財政対策債」で賄っています。臨時財政対策債については、後年、交付税に算入されるというものなのでこれらの影響は大きなものとなってくることが予測されます。