地域福祉を考えるP-1
地域福祉とは?
「地域福祉」という言葉は、地域政策を語る上で欠かせないことであり、誰もが口にしています。しかし、一口に「地域福祉」といっても「老人福祉」「児童福祉」「障害者福祉」「母子福祉」等、幅も広く中身をみれば専門的でもあります。「地域福祉」を語るとき概念から具体的技術論まで様々な意見が飛び交い、「地域福祉」のとらえ方、考え方は多様です。いざ、「地域福祉」って何? と聞かれるととまどってしまうこともあり、私自身勉強不足を感じるところです。
地域福祉の理論
国際医療福祉大学医療福祉学科長・教授 鈴木五郎氏によると「地域福祉とは、住民が地域社会において自立した生活を営むことを可能にするために必要な福祉と保健・医療等のサービス整備とサービスの総合化、福祉の増進・予防活動、福祉環境の整備、住民参加の福祉活動の支援を行い、これらの活動をとおして福祉コミュニティの形成をめざす福祉活動の総体をいう」としています。
福祉の在り方・考え方 常態化(ノーマライゼーション)という考え方
「常態」とは、「普段の姿、平生の有様」という意味です。かつては「福祉」とは何か特別な事柄というような考え方が長く続いていたようです。
常態化の理念は、デンマークで「知的障害児の親の会」の運動の中から提唱され、これまでの福祉のあり方に反省を求める世界的な旗印となったと言われています。
この考え方は、心身に障害のある人も高齢者も、すべての人が同じ社会の一員として、他の人々と変わらない生活を送ることが正常な人間生活であり、また障害のある人も地域を基盤にして他の人々とともに生きていける社会が正常な社会であり、そうした社会を実現することが何より大切だとするものです。
福祉の在り方・考え方 統合化(インテグレーション)という考え方
「統合」とは、一人ひとりの生活をトータルにとらえ、福祉サービスを総合化して提供することを意味します。個人が主体的に社会とのつながりを確保・実現することが望まれています。
現状の福祉制度やサービスは、現実には行政の縦割りの仕組みの中で運用されることから、個人や家族の生活を全体としてとらえず、窓口ごとにバラバラに提供され、生活の改善に効果的でないこも少なくありません。
私たちのまちでも、老人・児童・障害者それぞれに福祉計画が策定されていますが、内容をみてみると、同じ内容が言葉を替えて重複しているものもあります。
地域福祉は、サービスを利用する住民を主体にして、必要な社会サービスが生活と有機的に結びつくようにすることを目指す必要があります。
福祉の在り方・考え方 主体的参加(パーティシペーション)という考え方
地域社会は、さまざまな人間の生活そのものを抱える集合体といえます。地域社会で助けを求める人が孤立せず、また見過ごされることのないよう、円滑に福祉サービスを利用できるようにするには、地域の人々の間に相互的なつながりがあることが大切です。
こうした人間関係や社会形態・コミュニティーは、外部からの強制でできるものではなく、それぞれが地域の福祉問題について自分のことと同じように関心を寄せることによって出発すると考えます。
地域福祉のこれから
社会福祉基礎構造改革の名のもとに、市町村の福祉が変わろうとしています。福祉の基本的な担い手、推進母体に「市町村」と「住民」がなることに決まって「介護保険」「障害者支援費制度」など、仕事がどんどん市町村に移されてきています。
そして、市町村の福祉の総ぐるみの計画をまとめることが法律で決まりました。平成15(2003)年4月1日に施行されます。それに向け豊田町では、住民アンケート調査を行います。
この計画はこれからの市町村の在り方、福祉の可能性を試すものでもあり、何よりも住民の関心の高まりと参画が望まれます。