原点を見つめて 『情勢の変化と時代の流れ』

情勢の変化と時代の流れの中で 其の1 「豊かさの質の変貌」
私たちは、「古い」から「新しい」へ、「小さい」から「大きい」へ、「少ない」から「多い」へ、「遅い」から「早い」へ「余裕や無駄」から「効率」へ、「差異や格差」から「均質化」へ、など、こうした言葉に象徴される拡大・増大型の目標を掲げてきました。
こうした時代の中で、市町村にとっては、公共施設や道路や交通機関整備、上下水道の整備など、利便性や物質的豊かさを象徴する政策の実現が大きな仕事となっていたと思います。もちろんこれらの政策は、現在においても必要なものもあり、その重要性を否定するつもりはありません。戦後50年以上が過ぎ、どこにいてもある程度の利便性が享受でき、かつてよりは便利で豊かだといわれる社会になりました。しかし、心の底からの満足度や真の豊かさとは違うとの印象が広がり、豊かさについて今までの方向とは違った新たな視点が生れつつあります。具体的には、効率性ばかりの社会基盤整備から親しみやゆとりのあるものへ、画一的な福祉政策から個々具体の実情に応じた対応など、豊かさの質が変貌し始めています。
情勢の変化と時代の流れ 其の2 「社会の質の変貌」
一つは少子化による人口減少の始まり、二つ目は経済成長の鈍化と公的借金の増大である。日本の合計特殊出生率は、戦後4人以上だったが減少の一途をたどり、平成10年には1.38人まで落ち込んでいる。この影響で2005年から2007年以降、日本の人口が歴史上(一時期を除き)初めて減少に向かうと言われています。私たちが現在利用している社会の仕組みは拡大・増大型社会を前提としたものが多く、人口減少によって、その仕組みが立ち行かなくなることが予想されています。医療保険、年金などの社会保障制度がその例かもしれない。また2002年度末の国と地方の長期債務残高は693兆円になる見込みであり、日本の社会では、豊かさの変化とともに社会の質的な変化も起きています。
情勢の変化と時代の流れ 其の3 「行政経営のスタイルの変貌」
従来の拡大・増大型の時代は、多少の意見の相違はあったとしても、道路・水路の整備などは、概ね多くの方々が納得できる政策の中心でありました。これらについては、基本的には誰も異論がなく、財源の状況を勘案しつつ、いつ、どこの路線を整備するのかが論点となっていたように思われます。こうした時代には、補助金や起債など財源調達をすばやくし、より早く、より多くのものをつくれるかが評価であり、その内容の良し悪しを議論する必要性は必ずしも高くなかったと思われます。(権限・財源など国・地方の関係を考えれば批判ばかりはできませんが)
高度な経済成長を遂げている時代には、社会資本であれ、社会保障であれ、財源の手当により一定の満足が得られる施策が可能であった。しかし、経済成長が成熟期を迎えたと言われる今、今まで通りの何でも拡大・増大といった路線はとれそうにない。
そこで必要なのは「新たな暮らしの工夫」である。地方だけで解決できる問題ではないが、何も取り組まず現状を維持していくのは、ハッキリ困難だと考えられる。