少子化の影響を考える
少子化のマイナスの影響をできる限り少なくする対応に相当思い切って取り組んでも、21世紀半ばには、国民生活や人口減少社会の姿は、相当深刻な状況になると予想されます。
合計特殊出生率の長期低落傾向は20年以上続いており、今後奇跡的に急回復しても今生まれた子供が成人になるまでには、当然20年は掛かり、しかも現状は人口減少のスパイラルに陥っているので、時間が経つほど回復はより困難となっていきます。当たり前の話ですが簡単に言えば、10組20人の親世代が平均1.4人産むと子供は14人、子供の世代も同じ出生率なら孫世代は約10人となり、親世代の20人へ戻すには、子供世代では3人近く、孫世代なら4人産まなくては追いつかないわけです。
私が懸念するのは、これらの問題はボクシングでいえば、カウンターパンチではなくボディーブローのようなダメージであり「今に見ていろ」と言ったときには、闘う気力さえなくなってしまうのではということです。
少子化が及ぼす影響のポイント
1.労働人口の減少と年齢構成の変化が労働生産性の上昇を抑制し、経済成長率を低下させる可能性がある。
2.少子・高齢化の進展に伴い、年金・医療・社会保障の分野において現役世代の負担が増大すると見込まれる。
3.個人や人口1人当りの所得の伸びの低迷により、国民負担率が上昇し、税・社会保険料等を差し引いた手取り所得は減少する可能性がある。
産業構造審議会総合部会基本問題小委員会の試算(平成8年11月)
1995年度 | 2000年度 | 2010年度 | 2025年度 | |
経済成長率 | 2.3% | 3.0% | 1.8% | 0.8% |
国民負担率 | 36.7% | 39.7% | 47.4% | 60.0% |
(44.1%) | (49.9%) | (58.9%) | (92.4%) | |
勤労者1人当たり 手取り所得伸び率 | 1.5% | 1.9% | 1.0% | -0.3% |
?経済成長率は実質GDP成長率。伸び率の2000年度以降は年平均伸び率。.
?国民負担率の()内は、財政赤字フローを各時点で国民が負担した場合であり、仮に当該勤労者世代が税等により負担する場合には、手取り所得はさらに低下。
指摘される課題
2025年から2050年にかけて、総人口は1億2000万人から1億人に減少、 65歳以上人口割合は27.4%から32.3%に増加に増大すると見込まれている。
医療や年金など社会保障制度による給付費が、99年度は75兆円に上り、国民所得対比の値も19.6%と過去最高水準を更新したことが13日、国立社会保障・人口問題研究所の推計で分かった。高齢者を対象にした給付費の伸びが全体の伸びを上回り、高齢者施策が社会保障制度の中で一層重みを増している様子がうかがえる。財源の半分以上をまかなう社会保険料収入は、景気後退による所得減などが影響し、初めて前年の水準を割り込んだ。
給付費総額は75兆417億円で、前年より2兆9000億円(4.0%)増)えた。部門別にみると年金が40兆円、医療が26兆4000億円、福祉その他が8兆7000億円。特に老齢年金や高齢者医療、老人福祉など高齢者関係の制度を取り出して集計すると50兆4000億円になり、総額の67.1%を占め、前年比の伸びも2兆9000億円(5.3%)と総額の増加率を上回った。高齢者関係の増加分がそのまま、総額を押し上げた格好だ。
収入総額は96兆9265億円で8.6%増えたが、積立金の取り崩し増などの影響が大きく、収入の56%にあたる社会保険料収入は前年度より4400億円(0.8%)減って初めてのマイナスとなった。収入と給付の差額(約22兆円)のうち15兆円は、年金制度積立金への繰り入れだった。
簡単ではないにしても
現役世代を中心に社会保障制度の持続可能性への不信感が強まっている。高齢者数の増加に伴って、今後、社会保障給付費の増加は不可避であり、同時に、財源確保のために国民負担の増加が見込まれる。現在の社会保障制度のままでは、国民の安心を確保し続けることは困難であると思われ、国民の安心確保には、将来の所得に対する不透明感や不確実性の払拭が不可欠である。
国の国民負担率は、現在36.9 %(2001年度当初予算ベース)であり、欧州諸国などと比較した場合、追加的国民負担の余地が全くないとは言えない。しかし、国民負担率の上昇に比例して経済成長率が低下する可能性が高いことを勘案すると、相対的に経済活力を失わない努力が必要。
社会保障給付の効率化を通じて、給付額の抑制は行うものの、必要不可欠な社会保障給付は、ナショナル・ミニマムの観点から、確実に保障されていくことが望ましい。