地域づくりの仕組みとコミュニケーションのあり方について

現在、政治・経済・金融・行政・財政・社会保障・教育・環境などさまざまな分野での改革の必要性が叫ばれています。これは、社会構造の変化にともない従来の課題対処法だけでは、まかないきれなくなってきていることを意味していると考えます。地域課題においても、その現象は明らかで地域課題の質的変化が起きてきていると思います。これまでのような右肩上がりの経済状況であれば、政策の目標は、社会資本の整備であれ福祉政策や社会保障制度であれ、拡充という言葉で一定の理解が得られたものと思いますが、今後は、価値観の多様化の中で、施策のバランスや受益や負担のあり方について、町民とのコンセンサスを深めることが、更に重要になってくるものと考えています。
私は、こうした行政課題の質的な変化と価値観の多様化の中で、町民が「この豊田町に住んでいてよかった」と実感できる地域づくりの手法はどうあるべきかと言う点について、自問自答を繰り返しているところです。私が、これまでの活動を通し感じていることは、いろいろな方とお話をする中で「○○はどうなってるだ」「○○らしいぞ」と言うことをよく耳にします。この言葉に象徴されるように、施策や財政状況など行政の課題、方向性、取り組み、状況などについて、行政の行ってることが必ずしも的確に町民には伝わっていないということ。また、町民は、地域づくりの主体は自分たち自身だとは感じているものの、その具体的な実現手法がわからないといったことです。これは、行政と町民のコミュニケーションの不足から生じる問題だと考えています。
町長は、かねてより「コミュニケーションを大切にする。町民主体の開かれた町政を目指す」と言っておられ、6月議会においては、「町民の願いと声を反映させ、住民の英知と協力を得、住民の手による住民のための地域づくりをサポートすることが行政に課せられた役割である」との認識を示しました。私は、この言葉を大切な事柄であり意義深いものとして受け止めているところです。しかしながら、わが町においては、町民が主体的となった行政手法が仕組みやルールとして確立されているわけではありません。この言葉の内容を推進し、町民の満足や実感の得られる地域づくりをしていくには、コミュニケーションと参加の仕組みやルールをつくり、それを保証していくことが重要だと考えます。
分権社会の進展際し町長は「自己決定と自己責任が原則」との認識を示し、このことについて「国と地方の税源配分のあり方が大きな問題であり、財源委譲を含め現段階では未知数であり、この点が示されないと自己決定・自己責任おいての事業の立案執行は難しい」との答弁がありました。財源の委譲にともなう自己決定・自己責任の範囲や質の拡充と言った点については、私も同じような認識でいます。ここで、考えていかなくてはならないことは、行政における「自己決定・自己責任」とは、どういうことを意味し、どのようなあり方を示すのか、例えば、現状また今後進められる施策において、具体的にどのような場面でどのような事をしていくことなのかと言うことであります。私は、自己決定・自己責任を遂行するにあたっては、まず、責任を果たせるような決定の仕組みをどう作り上げるかが重要だと考えております。
私は、常々物事を執り行っていくには、ねらいと仕組み、意識の高揚が大切なことだと考えております。そこで、これらの課題に対して2点の提案をします。
1点目、行政と町民のコミュニケーションを深める仕組みとして、各省庁においても活用されている「パブリックコメント制度」の運用を図ってはどうかと考えています。「パブリックコメント制度」とは、政策の立案過程において、媒体(広報誌やインターネット等)を通じて「政策のあり方や政策案に対する意見を受け付ける機会を確保し、受け付けた意見を考慮して政策案の修正等を含め政策の検討を行う」という一連の政策立案過程上の手続きのことです。具体的な実施方法としては、政策立案過程における論点の公開、政策提案の公募、政策案の選択肢の提示等多様な形態が考えられ、政策に関する、時代背景、必要性、期待される効果と予測される負担などを可能な限りわかりやすく提示することです。これらを、行政情報ライブラリーの設置や町のホームページの内容の拡充において推進してはと考えるのです。まちの施策においては、先進的に取り組まれているもの、また、課題を残すものと様々に混在している中で、求めに応じて情報を提供する「情報公開」も重要でありますが、地域を取り巻く基礎となる情報を日頃から明らかにし、その情報をもとに議論ができる雰囲気づくりをすることが大切だと考えます。
2点目、町民の主体的参加推進と自己決定・自己責任の確立を目指す仕組みとしては、まず、行政と町民が信頼関係を軸としながら、まちづくりを共に進めていくことが大切だと考えております。このために、行政と町民の関わりに関して信頼関係が築けるような、一定のルールを示し明らかにしていくことが大切だと考えます。具体的には、政策決定のプロセスを町民への情報提供や参加を保障する事を原則に、情報の共有のあり方、住民参加の仕方、意思決定への関わりなどをまちづくりの基本的な仕組みとして条例化し「まちづくの基本条例」として策定してはと考えるのです。
いずれにしても、分権社会の進展に伴い、これからは地域の自治力が問われる時代だと認識しています。「自治」という言葉を辞書で調べると「自分たちのことは自分たちで処理すること」とされています。こうした力をつけていくには、机上の論理だけではなく実践的な取り組みを通して学び育てていくことが重要だと考えています。