消防団について

昭和23年、消防組織法の施行により自治体消防が発足した当時、常備消防は全市町村の2%で設置されているに過ぎず、市町村では、消防団が全ての消防力を担っていたと言われています。その後消防の常備化は進み、現在、常備消防は全市町村の96パーセント以上に置かれることとなりました。こうした大きな消防体制の変化の中で、消防団の担う役割も当然に変化してきました。
しかし、常備消防力が整備されたとしても、いつどこでどんな規模で発生するか分からない災害に、常に迅速に対応しなければならない消防防災機関の一員として、現在、消防団は必要不可欠な存在であるし、このことは21世紀においても基本的に変わることはないと考えております。消防団に注目する理由は、震災経験者からの話で、常備では消防団の代替ができないという教訓のほかに、近年注目されているボランティア論・NPO論に対して一つの具体的事例として消防団を考える必要を感じています。
消防団は常備消防と異なり、地域住民が自らの手で自らの地域を守ろうという自発的な意思により参画する、いわゆる義勇消防の組織であることが大きな特長です。この郷土を愛し隣人を守ろうとする精神、そして地域社会の防災を担うという使命感は、消防団の根幹をなすものとして将来ともに大切にされていかなければならないと考えております。
消防団は、郷土愛護の精神を受け継ぎながら、その長い歴史を築いてきました。その過程において「消防団に入団してはじめて一人前と認められる」「消防団に参加することは地域住民としての務めである」といった雰囲気がありましたが、住民意識の変化、連帯意識の希薄化などにより、その雰囲気が失われつつあることも事実です。人々の社会生活の変化にともない、地域社会の人間関係の中で「学ぶ・遊ぶ・働く」といった形や「人間関係により活力を生み出す」といった、人との間の元気の素がなくなりつつあると、一気にその機能は弱められる可能性があります。現在の消防団の課題はそこにあるような感じがします。
消防団を従来通り公の意識で動機づけるか、ボランティアという形で動機づけしていくのかは、今後の課題となるででしょう。そこで、ボランティアでは自主防災組織がありますが、よりプロフェッショナルに近いボランティアとして消防団を位置づけることが可能であるとも考えられます。
いずれにしても、消防団の充実強化のためには、消防団の持つ魅力の再評価と新たな活性化策が必要であると考えます。