不況を考えるP-1

「不況とは」
人々が経済への信用を失い、株価や地価など資産価値が低下するために起こる。それによって、人々は自らの資産(お金)がなくなったと思い、支出(お金を使うこと)を減らしていく。そうすると、物に対する需要は減ってくる。経済全体の需要規模が生産規模を大幅に下回れば、不況が起こる。不況とは、経済活動の低迷をいう。
需要不足のもとでは、人は働きたくても十分な雇用の機会が与えられず、失業が深刻化する。また、物が売れないから物価は低下し続け、いわゆるデフレ状態が続く。企業の稼働率も低下して人余りや過剰設備が増えるから、企業の利益率は低下し生産効率も下がってくる。その結果、株価も低迷する。供給側の企業が、消費者の求める物をつくらないからという議論もあるが、つまるところ、供給側が需要に合わせて物を作らなければ物が売れず不況が起こるということであり、やはり、景気の変動を生み出す根本は需要の状況だとも考えられる。

「倹約してもお金がたまらない?」
ある人が「物はもういらない。これまで贅沢したから、倹約してお金を貯めよう」と思って消費を減らしたとする。1人だけが消費を減らしたところで景気が悪化するわけでもないので、この人の所得は変わらず、思惑通りにお金は貯まって余裕ができる。しかし、日本中の人がそう思って消費を減らしたら、みんなお金が貯まるかといえば、実はそうはならない。
1人だけが消費を減らしても所得は減らないのでお金は貯まるが、日本人全員が消費を減らせば、日本で物は売れなくなり、仕事は減るし企業業績も悪化し、それぞれに入る所得も減少するのでお金は貯まらない。将来への不安が高まると、ますます一生懸命倹約して消費を減らし、さらに仕事が減るという悪循環が起こる。

「バブル」
人の欲望が物に向いているときは好況が続くが、欲しい物がだいたい手に入り、人の欲望が物からお金へ移っていくと、拝金主義が横行し、お金をいくら儲けたかに注目がいく、財テクである。土地や株式投資が盛んになり、地価や株価だけが上昇し、その資産から見込める将来の収益の合計価値を越えて価格だけが上昇していく。
不況はお金の保有願望を満たす
お金は不況のときほど実質的な価値が上がっていく。株や土地といった実態価値が不透明になればなるほど、ありがたいものとなっていく。

「みんなの心象心理」
いままで信じていた、地価や株価があれほどもろく崩れてしまった。自分の持っている資産の価値に不安が出て、物を買わなくなるとますます経済活動が停滞する。不況になったキッカケが深刻であればあるほど、不安な気分が続いて長い間閉じこもれば閉じこもるほど、体力も落ちてくるから、ふただび外へ出ようという気になれない。
よく考えれば、ここ10年でなにが変わったのだろう、経済活動の実態面(設備や労働人口など)はあまり変わっていない。しかし、活動水準とそれぞれの価値額が大きく変わった。それは、人々の心理状態の大きな変化に起因するところがあると思う。