地域の発展について考えるP-1
「地域社会の発展は多くの人の願いである」ということは、みんなが持つ共通認識であることは言うまでもないだろう。しかし、地域社会の発展とはどの様なことなのだろうか。
地域社会の発展とは、直接的には地域の生活環境基盤や各種施設の整備や経済・文化の発展などを指すことが多いが、そこに暮らす人達の内面化された様々な能力(個々の能力・、構成メンバーの自治能力)の発展を意味することではないだろうか。
地域社会が持つ社会的な機能は、生産・消費・子育て・教育・防災・福祉・コミュティーづくり・祭り・伝統行事・相互扶助など様々なものがある。地域の発展とは、単純に言えば、これら諸々の活動が発展していく事だと考える。
けれども、その中で「地域の発展」とは何処を目指しどの様に進めるべきかは、必ずしも一様でないのが現実である。「地域の課題を見つめる」ということも良く使われる言葉だが、「必ずしも一様でない」という問題自体が自ら解決すべき大きな課題だとも言える。地域の様々な機能とも言える様々な活動は、大なり小なりの利害の対立や意見の食い違いの中で成立していて、常に異なる立場・利害のぶつかり合いがあり、個人や集団による問題解決に向けた様々な実践活動が存在している。そうした多様な実践の主体(各種団体や個人など)の話し合いや参加を通して、それぞの合意形成が繰り返されるのが地域社会ではないのだろうか。こうした活動や実践を介した課題解決の過程が同時に地域における教育的機能とも言えないだろうか。
問題の当事者意識の確立には、当面する問題の客観的理解が不可欠である。問題の当事者としての自己の役割を自覚するには、自己の置かれた位置を客観的に把握し深く理解することが欠かせない。そのためには、直面する問題の正体が何であり、その背後には何があるのか、それが自分とどのように関わっていて、そこでの自分の役割は何であるのかを理解することが必要である。そして、自らが一貫した社会観を確立し、問題の全体像や問題に関わる経緯や将来の展望など、自分が社会と関わる立場として自らの言葉で説明出来ることが重要である。ここでは、客観的な知識の学習が重要となり、目の前の現実的課題を背後のより大きな社会的要因と関連づけて理解する機会が必要である。
地域社会の発展とは、こうした地域社会が全体としてもつ問題解決の能力が高まっていく事であり、また、それを支える個々の実践の力量が付いていくことだと考える。そして、解決過程における人の交流や協議・参加・連帯の高まりや活性化がポイントではないだろうか。